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北近畿・山陰の旅9 足立美術館へ行く

 中海から少々山間に入った所に有る足立美術館へ行く。

 ここは地元の実業家の足立全康と言う人が建てた私設美術館で、横山大観を中心とする日本画のコレクションで知られるが、それ以上にここを有名にしているのはアメリカの日本庭園専門誌で5年連続日本一に選ばれたと言う日本庭園である。

 アメリカの日本庭園専門誌にどれ程の権威が有るのか・・・ってか、そもそもそんな物が有って、あまつさえ日本国内の庭園をランク付けしている事に驚くが、考えて見ればアメリカは言わずと知れた変態の国。本来日本以上にオタク性の高い国民性を持っている。何が有っても驚くには値しないだろう。まぁ、お手並み拝見と行こうか(←?)。

 回りに殆ど何も無い山間に足立美術館は有る。もの凄く広い駐車場に平日だと言うのに結構な数の車が泊まっている。観光バスも多い。僻地(←失礼)に有る私設美術館としては随分な人気だ。

 評判の枯山水庭園を観る。うーむ…広い。どこからが借景の山なのか分からなくなりそうである。そして派手だ。なるほどアメリカ人に好まれる訳である・・・なんて言うと偏見だが、いわゆる侘び寂び感は余り無く、豪華で若干大味な印象だ。作りや手入れが大雑把な訳でも無いのに大味に感じるのはやはりその広さ故か。ヨーロッパの庭園の様に人工的・幾何学的に構成された庭は、自然に対抗して存在感を示す物なので大きい事は魅力なのだが、自然を象徴的に模す枯山水庭園は、広大な自然を抽象化して狭い空間に凝縮した宇宙観みたいな物が魅力なので、ここの様に実際の自然を思わせるスケールで作ってしまうと、象徴性や凝縮感が失われて散漫な印象を与えるのではないかと感じる。ちなみに背景の崖に滝が落ちていて、何か不自然だなと思ったらやはり人工の滝だった。ここの枯山水の中心には滝を模した縦長の大岩が据えられており、全体で山河を表現しているのだが、その背後に本物の滝を作るって発想はどうなんだろうか?

 単に景色としては美しいかどうかは別にして、色々な意味で違和感が拭えないのだった。

Adachi_02

 入り口近くに有る苔庭。落ち着いた色合いと造形で、これは結構好きだ。

Adachi_01

室内を通して庭を見せる『生の額絵』と称する仕掛け。「庭も一幅の絵画」と言う設立者の思いの表現だ。

Adachi_03

 館内に入って展示を観る。評判通り横山大観のコレクションが充実しているが…個人的には余り好みじゃなかったりする(T_T)。

 風景画の美とは対象となる風景自体が持つフォルムの美と、作者の内面から生み出されるフォルムの美を融合させつつ再構成した物だと思うが、横山画伯の描くフォルムは余りにも漫然と記号化された感じで、元の風景が持って居たで有ろう情感は全く感じられないし、自身の内面のフォルムを突き詰めた深みも感じられない。むしろ安易な思い付きで描かれた企画物の様に見える絵が多かった。

 とは言え世間的に評価が高い作品「雨霽る(あめはる)」とか「紅葉(こうよう)」とかはそれなりに味が有って良いとは思う。まぁ、良い作品も悪い作品も有るのが作家だが、単純に良し悪しと言う以前に絵に対する姿勢みたいな物に疑問を感じる作品が有る事が好きになれないのであった。

 次に企画展『競演-文展の画家たち-』を観る。

 文展とは後に帝展となり現在は日展となっている、日本のアカデミックな公募展の頂点である。ここのコレクションは日本画のみの様で、川合玉堂や伊藤深水、鏑木清方等が並ぶ。

 ここで印象に残ったのが西村五雲の「凍夜(とうや)」と言う作品である。雪原で月に向かって立つ一匹の犬を描いた淡彩の水墨画(だったと思う)だが、明治35年制作にしては極めて近代的で洗練された力強いデッサンで、背後から見た犬の睾丸や肛門まで写実的に描写する躊躇無いリアリズムと、その一方で陰影に沈む顔のディテール等は大胆に省略し、全体としてフォトリアリスティックな中に象徴的な情感を生み出す画風はアメリカの巨匠アンドリュー・ワイエスを思わせる物だ。しかしこの絵が描かれたのはワイエスが生まれる15年も前である。これは凄いと思う。だから足立美術館さん、この絵を図録に載せるか絵葉書を作るかして下さい。よろしくお願いしますm(_ _)m。

 その他は橋本関雪の「夏夕」とか山本春挙の「瑞祥」なんかが個人的には良かった。

 それにしても入館料2,200円は高過ぎである。メセナじゃ無いのかよ・・・(vv;)

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