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北九州紀行6 『成田亨の世界』展を観る PART1

 田川市美術館で開催されている『成田亨の世界』展を観た。展覧会の紹介に入る前に、恐らく余り知られていない成田亨と言う芸術家について私が知る限り解説してみようと思う。

 とかく『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』等のデザイナーとしてばかり語られる事が多い成田亨だが、本来は彫刻家・画家であり、ウルトラQのデザインに参加した頃の彼は抽象彫刻でアカデミックな公募展において入選を繰り返し、受賞経験も有る新進気鋭の彫刻家であった。

 そこで『ウルトラマン』のデザインを思い出して欲しいのだが、究極的にシンプルで有りながら明快な個性が有り、しかも美しいと言うデザインの理想その物である事が分かると思う。これは言葉では皆分かっているのだが実際にこの条件を満たすデザインを考えるのは中々出来る事では無い。

 しかし成田亨は主役のヒーローのみならず毎週登場する敵怪獣や宇宙人でもこの条件をクリアし続けた。カネゴン、ガラモン、レッドキング、バルタン星人等、子供がシルエットを見ただけでそれと分かる明快な個性を持ち、異形で有りながらグロテスクではない『カッコ良い』怪獣達には主役のヒーローと対等な生物としての尊厳が与えられている。又、メフィラス星人やペガッサ星人、チブル星人、ケムール人と言った宇宙人のデザインでは地球上の生物と掛け離れた抽象的なフォルムの中に生命感と存在感を与えている。更に40年近くを経てもその斬新さが失われるどころか益々際立つ『ウルトラホーク』や『ポインター』、『マイティジャック』と言ったメカニックデザインも見事である。

 これらのデザインはいわゆるデザイナーの感覚からは生み出されなかった物だと思う。成田亨が追求していた抽象彫刻とは具体的な『物』の中に潜む本質的な『美』を抽出する為に、枝葉のディテールを削ぎ落とし形を単純化・純粋化して行く行為だと言える。そう、成田亨は怪獣やメカニックのデザインを手掛けるに当たり、この抽象彫刻家的なアプローチを取ったのである。

 従って何故『ウルトラホーク』がいつまでも未来的でカッコ良く見えるかと言うと、実はこれが『メカニック』では無く戦闘機をモチーフにした『半抽象彫刻』だからなのである。戦闘機から人が感じる先鋭感やスピード感、力強さと言った印象を、彫刻家の感性と形に対する厳しい姿勢を持って単純化したフォルムの中に凝縮した物が『ウルトラホーク』だと言う事である。だからこれは時代を超越した永遠の『美しさ』、永遠の『カッコ良さ』を持っているのである。

 また抽象彫刻は観念の形象化でも有るから、成田亨は怪獣をデザインするに当たりメソポタミア文明まで遡って神話や伝説に残る怪獣の成り立ちやイメージの源泉を調べ、その上で驚く程の厳密さを持って自らの怪獣デザインの方向性を定義している。また、抽象化以外にも変形や同存化と言った古代から続く美術の中で編み出された表現手法をデザインに応用している。

 こうして生まれた成田亨の怪獣や宇宙人、メカニックは、本物の芸術家がその知識と応用力、高いテクニックと非凡な発想力を真剣に発揮して作られた『作品』だったと言える。それは純粋な意味での芸術作品では無かったが、人の感性を刺激し豊かにする芸術作品の価値を持っていたのである。

 と言う訳でキャラクター・デザイン以外の成田亨の仕事にも目を向ける必要が有ると私は訴えたいのだが、今回の展覧会は『成田亨の世界』と言うタイトルが示す通り、キャラクター・デザイン以外の成田亨の幅広い仕事にもスポットを当てようとしており、非常に意義が有ると感じる。

 てな所で次回はいよいよ展覧会の紹介と、キャラクター・デザイン以外の成田亨の仕事に付いて書いてみようと思う。(何か力入って来たな今回・・・・・)

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コメント

すご~!ここまでウルトラマンのデザインについて熱く語るとは、見事です!わたしもぜひ行ってみたいな~!

投稿: fuuuuuh | 2005.08.29 22:15

いや~、私が遅筆してる間に展覧会終わってしまったんですよ~!!意味ねー(爆)!!

投稿: うぃんすろう | 2005.08.29 23:01

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